山王祭を10倍楽しめる!祭りを支える伝統と秘密

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山王祭を10倍楽しめる!祭りを支える伝統と秘密

これは、山王祭のクライマックスシーン「神輿振り」

一月半にも渡って行われるこのお祭り!いいとこ取りの観光客とは違って執り行う人たちは大変。

重さ約1トンの神輿を担ぎ、山上まで1キロの道のりを登り

松明だけを頼りに、神輿を担いで駆け下りる。怪我人が出てもおかしくない程の行事です。(実際出る)

山王祭の全容は、日吉大社のBlogがなによりも詳細に渡って説明されてるので是非御覧ください。

山王祭のススメ①

山王祭のススメ②

山王祭のススメ③

山王祭のススメ④

実は「山王祭」には、携わる者が自ずと真剣になる秘密(仕組み)がありました。

大変な祭りだからこそ、多くの人の情熱と献身が求められますよね。

今回は、山王祭実行委員会と駕輿丁(神輿の担ぎ手達)の仕組みと役割を知り舞台裏を少し知った上で、

このお祭りを見に行ったらきっと「山王祭が10倍楽しめる」という主旨の記事です。

さて、そもそも、この記事を書くキッカケになったのはこれ、

一部の半纏を着た人が付けてるこの縄はなんだろう?

そう思っておじさんに聞いた所「この縄は、祭りに携わる者の階級の証だよ」

とサラッと教えてくれました。

(なんだろ「階級」ってめっちゃ気になる)

って事で、日頃イベント情報でチェキポンがお世話になってる

日吉大社の禰宜 矢頭(やず)さんに、山王祭の裏側を聞いてきました。

ちなみに、冒頭で説明したBlogを執筆しているのも矢頭さんです。

今回矢頭さんに3つのお話を聞いてきました。

1.稚児行列について

2.神輿振りなど山王祭の神事が表現している事

3.山王祭における階級制度について

1.稚児行列(花渡り式)について

矢頭さん

稚児行列、正式に「花渡り式」は、3歳〜6歳位の男の子が甲冑姿になりお花を曳いて参道を歩きます。

——初めてみましたけど、結構大掛かりでした。ここだけの話、お子さんの参加費ってどの位かかるんですか?

矢頭さん

稚児は原則学区単位の参加で、大きなお花を1本2本と数えます。ちなみに、このお花を1本を作るのにお値段20万円ほど掛かります。

——わ!結構な金額ですね。

矢頭さん

この費用は実行委員会で負担します、お花の割り当ては、地区ごとになっていて、坂本で13本、下阪本で2本、日吉台で1本、計16本の花を出すことが出来ます。

——ちなみに、出たい子供が被った場合どうなるのでしょうか?

矢頭さん

お子さん一人に花1本が原則ですが、双子や兄弟で歳が近い場合など二人で1本の花を曳く場合があります。地区内で、出たいお子さんが2人以上いる場合は調整するか若しくは、どちらかの家庭が「篤志花」というお花を実費で出す事になります。

——結構シビアな話ですね。

矢頭さん

実はこの「篤志花」は普通の花より豪華な造りになっていって、中には学区の花を断ってあえて「篤志花」で出すご家庭もあるそうです。

——ゴージャスな話ですね。

矢頭さん

とはいえご時世がら「篤志花」はここ数年出ておらず、最後に出たのは5年以上前。篤志花が出る年は、年初からその噂が街にひろまります。

——そう聞くと、ますます「篤志花」が見たくなりました。ただ、今年のお稚児さん、花が全部で6本くらいだった気がするんですが、やはり少子化の影響ですか?

矢頭さん

その影響も少なくないのですが、仮にお花の予算が掛からなくても、1本の花に対して、先頭の露払い、一対の金棒引き(チャリン棒)、お子さん(稚児)と父親につづいて、花持ち、お供の男衆(親族やご近所さん)。これだけの男の人が関わります。その他にも小学生男子が甲冑姿で担う戦騎という役もあります。ってなると…

——確かに、お花に補助が出たとしても、この方々のおもてなしとか考えると、ご家庭の女性方は大変なんじゃないですか?

矢頭さん

私の立場から、そのあたりの話は細かくコメント出来ないので、、、、

——(あ、察し)

お稚児行列に子供を出した事がある、お母さんに(匿名を条件に)聞きましたが

「とても名誉なことだと思いつつも実際、参加してくださる方の接待などがかなり大変!」

…だそうです。まさに、内助の功ですね。

2.神輿振りなど山王祭の神事が表現している事

——4基のお神輿並び、担ぎ手に囲まれてるだけでも壮観ですが、圧巻なのは「神輿振り」ガコンガコンとお神輿を前後に振る神輿振り始めてみた人はだれでも興奮しますね。

矢頭さん

ですよね!迫力ありますよね。この「神輿振り」は、出産を意味してるんです。

——え!お神輿が出産するんですか?

矢頭さん

正確には、神様同士の結婚・出産です。4基のお神輿の属する4つ神様、東本宮の神と樹下宮の神、牛尾宮の神と三ノ宮の神はそれぞれ夫婦なんです。なので真ん中の柱で左右に夫婦になってる感じですね。

——なるほど、それで出産の陣痛をガコンガコンで表してると。う〜む生々し

矢頭さん

・・・その神輿振りの後、実行委員長の祝詞の奏上が終わったら、一斉に神輿が降ろされて先を争うように西本宮まで向かいます。

——これも見ました。それまでの長い時間がウソのように、あっという間にお神輿が走り去っていった印象です。

矢頭さん

じつは、あれ走るのは50m程度で、そこまではガチの競争なんです。この競争もルールがあって、必ず写真の手前にある樫の木の間を通って行くことが義務付けられています。従って急カーブなんで一番手前が有利かというとそうでもなく、毎年熱い勝負が繰り広げられるそうです。

大昔は、この競争で一位になった地域は、1年分の年貢が免除になったそうです。

賞金デカすぎ。そりゃ、燃えないわけがないですよね。

——先程、神様が夫婦になってると聞きましたが、確かにこうやって見るとお社(やしろ)の場所もつがいみたいになってますね。

矢頭さん

実は、このお社にも格付けがあって、①東本宮②牛尾宮③樹下宮④三ノ宮という順番になってます。駕輿丁がお神輿に到着する順番もこの順番になってます。

——じゃあ、みんな東本宮のお神輿が担ぎたくなるんじゃないですか?

3.山王祭における階級制度について

矢頭さん

話が、駕輿丁(かよちょう:担ぎ手)の事になりますが、山王祭を支える駕輿丁はお神輿と対になり4つありまして「中部」「広芝」「至誠」「下阪本」があります。この中から毎年輪番で、山王祭の実行委員長を輩出します、この順に従って委員長番の駕輿丁が東本宮のお神輿を担当します。

——お話が駕輿丁と実行委員会に移りましたね。実は、先日のお祭りの時にこの「襷(たすき)」が気になりまして、写真のこの方に襷について聞いたら「実行委員会の階級の証だよ」って教えて下さいまして。そこから私は「襷」と「階級」が気になって気になって。今回の取材に駆り立てられたんです。

矢頭さん

わかります!この手の話って男心をくすぐりますよね。せっかくですから、実物の襷を見ながらご説明しますね。

——ありがとうございます。実物が見られるなんて嬉しいです。

矢頭さん

組織は、「中部」「広芝」「至誠」「下阪本」とその駕輿丁から輩出する実行委員会本部の5つに別れます。まずは、駕輿丁の中での襷と役割からご説明します。

矢頭さん

まずは、襷としては末席にあたる「赤襷」。4つの駕輿丁に10人ずつ任命される役職で、多くの担ぎ手の中から何年も貢献したのリーダー格の若手が担います。

——「赤襷」は、全体でも40人なんですね。お祭りには担ぎ手が沢山いましたけど、そもそも襷付けてない人多いですよね。

矢頭さん

そうです担ぎ手の中でも、実際にお神輿を担ぐようになる前に、何年か「松明持ち」などの役割が色々あって、それを何年か経た者が晴れて「担ぎ手」になるんです。

——そもそも「担ぎ手」になることに段階があるんですね。

矢頭さん

ここ坂本で生まれ育った男の子にとっては、この赤襷を手にする事は、一つの目標になります。

矢頭さん

次は「黄襷」。赤襷への指示や指導をしつつ、担ぎ手達の管理を担います。

矢頭さん

あ、言い忘れましたが、駕輿丁の襷は、「赤・黄・白・紫」各色10人ずついます。なので、役職者は毎年数人ずつ持ち上がっていく感じになります。

矢頭さん

続いては、「白襷」。4つの駕輿丁は、実質的にこの白襷の方々が取りまとめます。

矢頭さん

駕輿丁の最高位「紫襷」。駕輿丁内の統括だけでなく、他の駕輿丁、実行委員会など対外組織との調整に携わる。

——責任の増しいく感じがしますね。皆さん心地よいプレッシャーかもですね。

矢頭さん

ここまでが駕輿丁内の階級で、ここからが実行委員会全体の階級です。

矢頭さん

これは、実行副委員長の「金銀襷」。4つの駕輿丁から2人ずつ任命され全部で8人、実行委員長の補佐として活動します。

——太さも、ふさの立派さも違って格を感じますね。

矢頭さん

そして、これが委員長のみが身につける「金襷」。ただスミマセン、本物は実行委員長が保管して、代々委員長に引き継がれますのでこれは、万が一と言うか予備というか、、、、レプリカというか。

——あ、ニュアンス良くわかります。不思議なもので、こういうのって使い込まれた襷の方が不思議なオーラを纏うもんなんですね。

矢頭さん

本物は、次の山王祭で委員長を見つけて下さい(^^)

——あの〜、冒頭に写真のあったオジさんが身に付けていた色んな色が混じった襷は何なんでしょうか?

矢頭さん

あ、そうでしたね。今回の取材のきっかけは、あの襷でしたね。

矢頭さん

実は、この襷の種類にはまだ続きがあるんです。

——なんか、外伝みたいですね、ワクワクしてきました。

矢頭さん

改めまして、まずこれは太い「紫襷」実行委員会書記の方が身に付けます。

矢頭さん

これは、「金紫襷」。実行委員会三奉行が身に付けます。獅子奉行、船奉行、勘定奉行、とそれぞれ実行委員会で経験を積んだベテランが任命されます。

矢頭さん

これは、「金緑襷」。総奉行って書いてありますが、ここまで紹介した実行委員と奉行衆を束ねて、「金襷」の委員長を補佐します。そしてこの任には前年度に実行委員長を経験した方があたります。

——なるほど、、、、で、矢頭さん、オジさんの襷がまだ出てきませんが。

矢頭さん

まー、あわてないで下さい、ちゃんと説明しますから。

矢頭さん

これのことでしょ?

——そうです、この襷です。

矢頭さん

これは、「五色襷」。実行委員長を経験者した方が身につける襷です。

矢頭さん

あ、ちなみに自治連合会町さんの襷もこの「五色襷」です。

——あ、じゃああのオジさんは、過去に委員長を経験したベテランって事ですね。

矢頭さん

そうですね、私達関係者からすると、歩く辞書みたいにコツやしきたりを教えて頂けるありがたい存在です。

——こうやって知れば知るほど、お祭りは過去に貢献したお爺さんが現役で輝いて見える粋な時間でもあるんですね。

矢頭さん

良いこと言ってくれますね〜。次の山王祭も是非見に来てくださいね。

——もちろんです。矢頭さん今日は、色々と丁寧にご説明頂きまして本当にありがとうございました。

このお祭りの詳細をまとめた本があります。より詳しく知りたい方は読んでみて下さい。

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hatchi

チェキポン編集部。大津市在住。コーヒーとビールと活字があればとりあえず生きていけます。今はもっぱら自転車にハマってます。

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